キヴィアックにはカシミアよりも柔らかく、ウールよりも暖かいという驚きの特性が備わっています。格別に細く高貴なこの繊維は、カナダ北極圏の厳しい寒さからマスコックを保護します。

ジャコウウシは小さなグループで生活します。まったく人馴れしておらず、特に狩猟が行われる地域では近づくことも困難です。ジャコウウシの縄張りに入ると、ジャコウウシは仔牛を後ろにまわして戦闘態勢を作ります。追い詰められたと感じた場合は攻撃しますが、数秒観察した後逃げるほうを好みます。
ジャコウウシは暑さに弱く、春の訪れとともに岩石や灌木で二重の獣毛を取り払います。こうして5月から6月にかけ群れが通過する地では、ツンドラ地帯に植生する低木ヤナギの枝に引っ掛かったキヴィアックの束が多く見られることも珍しくありません。こうしたウールは生産者たちが回収しますが、大変な洗浄作業を要します。


Anita HoeghとBirthe Melin Andersenの工房でキヴィアックウール収穫に行われる皮のコーミング。そのためには、皮を木製の円筒に張りつけます。まず毛を約7cmほど毛皮からカットし、その後櫛でアンダーコートに取り掛かります。